新人レポート:~字幕・解説放送の世界に入って~

2024.03.13
CREATOR REPORT
阿部ひより
メディアコンテンツセンター字幕・解説放送制作部

昨年の5月、メディアコンテンツセンター字幕・解説放送制作部に配属されました。
私にとって字幕・解説放送の世界は憧れで、毎日がワクワクする、新しい経験と文字にあふれた日々でした!
今回は1年目の私の目線で、研修内容及び字幕・解説放送についてお伝えします。

実地研修 「運営チーム」と「パッケージチーム」
5月~10月 "字幕・解説放送のハブ空港"にて

配属後はまず、字幕・解説放送制作部の「運営チーム」に加わりました!
運営チームは、字幕・解説放送の制作がスムーズに行われるよう制作者に代わって番組側と素材のやり取りや転送された映像の取り出しなどを行います。
例えるならば、字幕・解説にとってのハブ空港的な役割です。

ハブ空港という言葉から連想していただくと分かるように、運営チームで扱う情報の量は膨大です。
はじめて業務に取り組んだ時は、「自分が今何をしていたのか・しようとしていたのか」を意識して動かないと、記憶が頭からこぼれ落ちてしまうほどでした。

しかし、慣れていくにつれ、次第に部全体や、私たちを取り囲む人々の流れが掴めるようになりました。それと同時に、想像以上に多くの人が字幕・解説放送に関わっているのだと実感しました。
映像に注ぎ込まれた熱量と時間について分かったからこそ、自分に託される業務に対して重い責任を感じました。

ですが、その重さにつぶされず、日々成長するために努力することができたのは、先輩方が寄り添ってご指導してくださったおかげだと思います。分からない点を質問すると、いつでも快く、すぐに返答してくださるので、業務についての理解を深めながら毎日を過ごすことができました。そのうち、自分の行う仕事に自信が持てるようになりました。

11月~現在 普遍的に通用する字幕づくり

次に、「PKG(パッケージ)チーム」に参加しました!
これは、パッケージ番組 (註1)に字幕を付与する仕事です。担務を変更してすぐ、衝撃的だったことが2つあります。

(註1)パッケージ番組 放送前にそのままオンエアできる内容になっている番組のこと(生中継等がない)

(註2)聞き打ち OAされる映像の音声をじかに聞き取って文字起こしをすること

(註3)ハンドブック 一般社団法人共同通信社の発行する「報道において使用してよい使える漢字、記号、固有名詞の表記法」等を定めたルールブック

1つ目は、字幕制作が聞き打ち (註2)であること、2つ目は制作のルールが厳しいことです。
特に、字幕ならではの言葉のルールは、習得するまでにまだまだ時間がかかるだろうと感じています。

社内専用の文字校正例と記者ハンドブック(註3)に基づいて入力を進めるのは、考えていたよりもはるかに大変でした。
例えば「ヨイ」という発話は「悪い」の反対語として置き換えられる場合のみ「良い」と表記し、それ以外はひらがな表記にする...など、言葉に対して自分が抱いていた当たり前の感覚が、客観的に見た時にどれほど誤っていたのかを思い知りました。

ですが、これと併せて、統一された揺るがないルールの基で作成された字幕が放送されているからこそチャンネルを替えても言葉の面でつまずくことが少ないのだろうと納得しました。
自身の持つ言葉についての知識をアップデートして、正確な字幕を入力できるようにならないといけないなと強く感じました。

 

(註4)NeON CA 映像ファイル、または音声ファイルを取り込むと、AI音声認識により音声をテキスト化(文字起こし)してくれるソフト

 

また、現在新たな取り組みとして、「NeON CA 」(註4)という音声認識のAIソフトを使用しての制作も進められています。これは、うまく活用することで、今後の字幕制作時間を短縮することができると期待されているものです。
誰もが楽しめるテレビを広く届けるために、現存する技術と最新の技術を織り交ぜながら進化していく字幕制作の一面を見て、AIには代われない仕事だなと感じました。

まだまだ力不足ですが、これからも多くの経験を積みながら、より早く一人前の入力者として仕事に取り組めるよう、日々成長していきたいと思います。

番外編~そんなところにも⁉ 字幕・解説放送が
11月...デフ陸上

聴覚障害者のアスリート、「デフアスリート」にとっての陸上競技大会に、字幕・解説放送制作部が参加しました。

  • YouTube中継配信
  • 実況解説
  • 場内リボンビジョン

の3つに関わっており、私はその様子を一日見学させていただきました。
AX-ONの3センター(企画戦略センター、スポーツセンター、字幕・解説放送制作部)だけでなく、字幕制作会社のカイケンホールディングスさん、ほかにもテレビアルファさんと協力しながらリアルタイムで字幕が付与されていく過程は、複雑でワクワクするものでした。
手話と文字が飛び交う音のない世界で、音が文字となって選手や観客に伝わっていく瞬間を見て、他のイベントにも字幕が付与できたら面白いなと感じました。

また、聴者が字幕から情報を得ている姿を目撃して、私が思う以上に字幕の需要は高いのだろうと感じた一日でもありました。自分の考える字幕の世界が大きく広がった貴重な一日でした。

日本デフ陸上競技選手権大会 会場にて
不定期開催...手話勉強会

AX-ONでは月に一度、手話勉強会が行われています。

手話の先生をお迎えして、Teamsで開催されています。
私も参加してみて、日常会話で使われる手話に加え、テレビ業界ならではの手話単語やインタビュー時に使える手話についても学べる楽しい時間を過ごしております。

2025年に控えるデフリンピックに向けて、手話勉強会で学びつつ、自主的にも理解を深めていくことで、少しでも何か役割を担えたらいいなと考えています。

最後に...

一番最初に運営業務を担当したことで、番組ごとの特徴などについて大まかに理解できました。
それによりパッケージ業務(註5)でも、番組ごとに先回りして考え、業務にあたることができているように思います。
ですが、まだ目の前のことに集中しすぎて周りが見えていない場面も多々あります。

(註5)パッケージ業務 パッケージ字幕を付ける業務、すなわち納品される放送用素材に基づき、放送開始前までに字幕データを制作する業務

 

もうすぐ2年目になるということに不安や焦りも感じていますが、自分らしく、周りの支えてくれる方々に感謝の気持ちを抱きながら、業務に邁進していきたいと思います。