「音のない世界」デフ陸上を中継 ~センターの垣根を越えて~

2023.11.30
CREATOR REPORT
小村直之
スポーツセンタースポーツ1部

「ありがとう」「おつかれさま」

あれだけ社内で開催された手話勉強会に出て、一から覚えた手話も、いざデフアスリートの皆様に対峙したら頭は真っ白、発揮できたのはこれくらい...でも良いんです。
無事中継が終わって、これだけ安堵して、みんなで飲んだビールがうまかったのも初めてだったので...。

◆ 皆さんは「デフリンピック」をご存じですか?

Deaf(デフ):聴覚障がい

パラリンピックに聴覚障がいは含まれない、デフアスリートにとって最大の舞台。それがデフリンピックです。

2025年、日本で初めて、東京で開催されることが決まりました。会場は駒沢の陸上競技場。
2025東京デフリンピックを見据えて、今年11月、同じ会場でデフ陸上競技大会が行われ、その中継業務を担当しました。

一言で中継と言っても、業務は多岐に渡り...大きく分けると以下の3つ。

  • ▶ Youtube中継配信&実況解説に字幕付与
  • ▶ 場内大型ビジョン映像制作&場内アナウンスに手話を付与

  • ▶ 場内リボンビジョンに字幕付与

デフ競技を伝えるうえで「字幕」と「手話」は必要不可欠なんです。
というのも実は1年前、僕自身同じ大会を中継していました。そこで強く感じた、「音のない世界のスポーツ競技」をどう伝えるか。

たとえば、選手はどうやってスタートを切るのか?リレーバトンをどう受け取るのか?選手とコーチは手話でどんなやりとりをしているのか。それを伝える手立てはないのか?
「字幕」と「手話」を中継に盛り込むのは絶対だと感じたのです。

そこで!今回3つのセンターが一つのチームとなりました。

  • ▶ スポーツセンター(中継全体)
  • ▶ メディアコンテンツセンター(字幕制作)
  • ▶ 企画戦略センター(デフ陸上協会 全体調整)
◆ 字幕・手話の投影、そのシステム作りを一から、メディアコンテンツセンター字幕・解説放送制作部の中村遥風さんをチーフ筆頭に皆さんと力を合わせて。
リボンビジョンに付与する字幕の改行が、このビジョンサイズだとうまくいかない...
ビジョンを2つのサイズに分けて、広く会場の人が見られるよう投影してみては?

⇒ 解決!

◆ 協会と我々の間に入り、必要な情報を吸い上げ調整してくれた企画戦略センターの和田弘江さんと力を合わせて。
大型ビジョンに付与する手話、普通にワイプでいいか...
クロマキーで抜いたほうが世界的に主流で、デフ選手から評判も良いですよ!

⇒ 改善!

もちろん、技術協力テレビアルファさんの全面協力があってこそ成立していて、さらに全体を仕切ってくれた同じスポーツ1部の外石隆幸P・嶋岡大輝Dと、関わってくれたすべてのスタッフとも力を合わせて、すべてのセンターが力を結集してできた中継でした。

一番右(黒)中村、右から3番目(黄)和田

打合せ

字幕や手話、デフスポーツならではの映像づくり、もちろんまだまだ課題はあると思います。

2025年の東京デフリンピックで中継ディレクターをやれることを夢見て、まずは手話を完璧にすることをここに宣言して締めとさせていただきます!!

追記

今回、デフ陸上に携わったメディアコンテンツセンター字幕・解説放送制作部の3人にもコメントいただきました!

【中村遥風】

字幕を軸に画面やサービスをつくっていけるなんて、入社時には夢にも思わず、字幕スタッフ冥利に尽きる、すごく幸せな経験でした。
普段、字幕をやっているからこそ感じている限界や、ここまでできれば充分でしょとすぐ妥協する私の甘さを、もう一歩粘って「やりましょ」って引っ張ってくださった皆さんに学びと感謝でいっぱいです。
本当にありがとうございました!

【根本 章】

新しい試みとして字幕配信に携わることができとても有意義な時間になりました。
事前にできることを模索したり配信2日目には字幕への配慮のために、リザルト位置を調整していただけたりと完遂までを間近で見学でき感謝しております。
今回、経験したことを踏まえて、さらに挑戦していければと思いました。

【小潟達也】

今回のデフ陸上、センターを横断したアックスオンのチームとしての強みを感じましたし、字幕としてもデフリンピックに向けやるべき課題が明確に見えました。
2025年までにそれらの課題を1つずつクリアし、デフリンピックでは字幕でもっと会場を盛り上げられるよう取り組んでいきます。