
≪企画MVP≫ 中国・広州&深セン 視察研修レポート

視察研修先は中国の広州&深セン
NHK総合の「地球メシ」という番組の採択や、多くの企画提出が評価され、2018年企画MVPを受賞しての辞令を受けて、9月末、中国の広州と深センへ2泊3日の視察研修に行ってきました。
広州は中国の南東部、広東省にある中国第3の大都会。
そして、その隣にある深センは、1980年代に経済特区になって以来30年あまりで小さな漁村から1400万人が住む都会に急成長した街。
また、「中国のシリコンバレー」と言われるほど、ITを始め先端技術の会社が集まり、その技術が街全体にも溢れる、世界の中でも随一の最先端都市として注目されている街。
ほんの短い時間ですが、実体験すべく視察に訪れてきました。その様子をお伝えします。
セキュリティ管理は当たり前。顔認証
日本でも、広まりつつある顔認証。現地では、生活の中に浸透している。
高鉄(中国版新幹線)の駅では、改札ゲートで中国人は顔写真付きの身分証、外国人はパスポートを機械にかざすのですが、それが顔認識になっている!しかもスピーディー。ちょっと下を向いていてもきちんと判断してくれる。かなり精度が高い!
外国人は切符を買うときにもパスポートが必要なのだが、顔認証の改札ゲートでさらに警備体制を強化しています。
また、一部のコンビニでは顔認証でお会計もできる。事前に顔写真のデータを読み込んでおけば、レジで専用の機械を覗くだけで、お財布どころか携帯も出さずにすぐに支払いが終了。
駅やコンビニなど生活の中に顔認証が浸透
顔認証の技術を体験できるイベント
さらに、深センは中国の中で5Gのテスト地区になっているようで、通信各社が5Gの街中で顔認証のさらに進んだ技術を体験できるイベントを開催中。顔認証の技術では、目の前に人を瞬時に判断し、年齢が正確に出る、笑顔を点数化するものや、一度に何百人も認識できる顔認証カメラも登場しています。
顔認証の技術が上がることで、中国では、これまでのセキュリティ以外の分野でも活用が広まりつつあります。もちろんそれはエンターテインメントの場でも進んでいくと思われます。先ほどの人の笑顔を判断し、数値化する技術など、バラエティ番組での新たな演出に使えるのではないかと思います。
DJIショールーム
大型ドローン、戦車型ドローンなどを取り揃えているDJIショールーム
私たちも撮影でよくお世話になるドローンやオズモカメラのメーカー DJI。
その旗艦店とショールームが、2年前にできた深センの最新商業エリアの一角にあリます。
荷物を運搬できる大型ドローンから、手のひらサイズの小型なものまで取り揃え、中には360度スコープとドローンを組み合わせたものも。ドローンに搭載した360度カメラで撮影した映像をリアルタイムでスコープに映し出し、ドローンの視点を疑似体験できるという優れものです。
他にも日本では見たことがないのが、戦車型のドローン。スマホやタブレットで操作できてパッと見はラジコン的だが、プログラミングをしていくことで内蔵のAIが学習し、自動追尾や自動運転などができるようになる。しかも、この戦車ドローンの目的は、子供のプログラミング教育用のおもちゃ。値段は日本円でおよそ5万円とおもちゃにしては高額だけれど、今現地では大人気。
今や世界一のドローン技術を持つDJIですが、これまでの"人が操作して見たことが無い映像を撮る"というところか、AIを搭載したドローンが"自分で考えて必要な絵を撮る"というのが当たり前になる時代がすぐそこに迫ってきているように感じました。
そうなると、私たちの映像表現の幅もより広がるでしょうし、人間が撮るよりもAIドローンが考えて撮る方がいい絵になるなんて事も起こり得るかもしれません。
どこもかしこも、スマホでのQRコード決済
タクシーや屋台などでもQRコード決済が可能
"PayPay"や"LINE Pay"など日本でも広まりつつあるQRコード決済。
広州や深センでは、ホテルやデパート、地下鉄やバスの公共交通機関は当たり前。タクシーや街中の古びた食堂や、屋台でもQRコード決済が可能で、"ウィチェット"(緑)か"アリペイ"(青)の2社のうち、どちらかは必ず使えます。
どちらも中国の銀行口座を持っていればすぐに登録できるので、都市部の人は使っていない人がいないほど。
驚いたのは、たとえお客が現金で支払いをしても、お店側に現金がなく、QRコードでお釣りを送られることもしばしば。
また、"ウィチェット"や"アリペイ"などのアプリと連動している様々なサービスもありました。
アプリの位置情報と連動して、タクシーを呼べるし、中国版のウーバー(ウールマー )とも繋がっていて便利。料理からスイーツ、フルーツまで24時間運んでくれる。
まさに、スマホ一台があれば、通信以外に買い物や移動など本当に何もできる。そして、その状況に老若男女あらゆる人が順応しているように見えました。まだ"ネットに強い人"や"若い人"ばかりが使っているように思える日本とは雲泥の差。
中国版のウーバー
これは、どこにあるかと言うと、その一端にどうやら"教育"の問題があるようです。
中国の都市部の家庭では、今、子供にプログラミングを覚えさせるのが必須となっているそうで、学校に以外にプログラミング塾に通わせるのは当たり前。プログラミングを始めIT知識に強くなければ、将来有望な職につくことができないと浸透しているようです。来年やっと小学校で必修科目となる日本とは大きな差があると思います。
そんな、世界を先んじようとする中国の教育事情や学校事情を深く掘り下げる取材や撮影をして見たいと思わせる、深センの風景でした。
フーバー
アリババが運営する会員制のスーパー カニやエビなどが水槽の中を動き回っている
中国版Amazonとも言える"アリババ"が運営する会員制のスーパー。支払いは全て"アリペイ"で行います。
このお店、簡単に言うと、Amazonの商品リストの画面を、実物としてお店で見ているもの。なので、その場で通常のスーパーと同じく買い物をして商品を持って帰るもよしだが、注文だけして好きな時間に届けてくれることができる。さらに、店内で食材を調理して食べることもできる。
なので、平日のお昼休みに訪れて食材と調理法を選んで注文して、仕事帰りの時間に合わせて宅配してもらうなんて便利な使い方もできるそう。
それでも、"わざわざお店に行く必要ないじゃん"と思うかもしれないが、ネットの画面で見るのと実際に商品を見るのと安心感に違いがあり、フーバーの1番の売りも生簀で生きたまま売られている超新鮮な海産物。魚やエビ、大きなカニが水槽の中を動き回っている。これだと、普通だとネット販売だと倦厭しがちな生物も安心して買うことができる。
私たちは"現実と違いネットだからこれが出来る" "ネットだとこれは出来ない"と考えてしまいますが、ここ中国では、ネットと実物の垣根が徐々になくなっていて、そこに今までなかった新たなサービスやライフスタイルが作られているようです。
よく、番組の企画の中で"ネットとの連動"ということが注目されますが、その"テレビを主とした連動"ということ自体を考え直さないといけないのではと思わされました。
他にも、こんな最先端が中国にはありました。
未来商店
店員のいないオール全自動の飲食店「未来商店」
注文して3分以内に料理が出来上がってきて、忙しい深センの人に重宝されている。同様に「未来書書店」もある。
ビルのLEDライティング
中華人民共和国70周年を前に町の高層ビルが、ライティングされているのだが、いくつものビルが連動してメッセージを出すことができている。
窓や柱にLEDが設置されていてそれがプログラミングで連動。
まとめ
特に深センは、街行く人達が若く活気にあふれていました(住人の平均年齢が30代前半!)
最新のテクノロジーばかりが注目されているが、特に新市街は街自体のデザインも最新のセンスに溢れていて、街に住む人たちの生活自体が、最先端を行くという空気がありました。
クリエイターという目線では、ドローンや顔認証など映像制作に繋がりそうな具体的な技術を見ることができただけでなく、"新しいもの、面白そうなものに直ぐに取り組み、例えダメでも切り替えてまた新しいものに取り組み続ける"そんな深センの町の人々の雰囲気は、とても刺激になりました。
これからも、番組制作に止まらず、新たな取り組みができるよう努力し続けていきたいと思います。
最後に、このような貴重な機会を与えて頂けて、谢谢!!