映画「青春ゲシュタルト崩壊」バリアフリー上映決定!




- 2025年6月13日公開
- 【配給:NAKACHIKA PICTURES】
- https://seishun-gestalt.jp/
6/13(金)公開初日より、『UDCast』専用アプリに対応した日本語字幕、音声ガイドもスタートします。
対応劇場と上映期間等詳細に関しましては、下記リンク先をご確認ください。
6月13日公開『青春ゲシュタルト崩壊』UDCast MOVIE | Palabra株式会社(パラブラ株式会社)
本作はAX-ONにとって初となる、製作委員会の主幹事をつとめた作品です。そして映画本体をAX-ON制作1部が手がけ、そこに私たちAX-ON字幕・解説放送制作部が字幕・音声ガイドを付与するという、AX-ONの強みである社内連携を最大限に活かして作り上げた作品です。映画の字幕・音声ガイド制作にあたっては、通常の納品フォーマットとは異なることや、当事者の方・制作の方にもガイド内容を確認いただく場(モニター会・シミュレーション会)を設ける必要があることなど、いつも行っている制作とは異なる部分もありました。
しかし、「金曜ロードショー」での映画作品の字幕・解説放送の制作に長く携わってきたことこそが、私たちの強みでもあります!
- ―"さまざまなジャンルの作品に慣れていること"―
- ―"スピード制作×高品質" ―
- ―"当事者団体との関係値を築けていること"―
私はこのAX-ONの強みを信じて、制作に臨みました。これまで日本テレビの番組制作で培ってきたノウハウを生かし、バリアフリー上映においても、ユーザー目線で見やすい・分かりやすいガイドを作るべく、作業に向けてチームで検討を重ねていきました。
今回は公開初日から字幕・音声ガイドを実装させたいという配給会社ナカチカピクチャーズさまの希望もあったため、公開予定日から逆算して スケジュールを作成し、各所と連携しながら進めていきました。
花上が統括プロデューサーとして全体スケジュールの作成・管理、外部との向き合い・調整作業を行い、伊藤が字幕、設楽が音声ガイドの制作責任を担当いたしました。
初めての映画字幕制作ということでまず行ったのが、納品までの綿密なスケジュール立案、および作業内容や作業時期を細かく整理したロードマップの作成でした。また、制作を始める前に、実際に複数の映画作品を鑑賞し映画字幕の傾向を学び、それを取り入れながら字幕表記のルール策定を行いました。そしてテレビ放送での字幕制作で培った経験豊富なスタッフが集まって意見を出し合うことで、AX-ON独自の字幕表記ルールを確立させることができました。
制作1部から事前素材の受け取りも進んでいたので、「できることは全て行っておこう」という気持ちで、登場人物名の端末登録や資料作成など、あらゆる準備を行って制作開始に備えました。
事前準備を終えた頃、完成した映像が搬入されて、いよいよ字幕制作開始。初めての映画作品、慣れない制作端末、映画用の表記ルール...、困難は数多くありました。しかし、事前に行った万全の準備に加えて、字幕制作担当者同士での相談や音声ガイド担当者との情報共有を密に重ねて進めたこともあり、予定通り字幕として形にすることができました。


続いて行ったのがシミュレーション会。出来上がった字幕を映画制作プロデューサーに視聴していただき意見を伺います。演出スタッフ目線の意見に加え、字幕制作に携わっていない視聴者に近い視点の感想も聞くことができたので貴重な場となりました。字幕表記で作品の雰囲気を損なわないよう、また世界観を守りながら字幕で内容を伝えることの重要性を改めて認識しました。


こうしてシミュレーション会で挙がった意見を反映させることで。観る人にとって分かりやすい字幕が完成しました。テレビ字幕とは全く異なる制作フローなど、今回の経験を通して映画字幕制作の基礎を確立することができました。
- 言葉にならない大切な瞬間を
- 声で描き、心で観る映画。
映像の中で言葉にならない動きや表情、場面の移り変わりを「声」で伝えるナレーションです。
視覚に障がいのある方が映画を楽しむ際のサポートとして活用されています。
スマートフォンで専用アプリをダウンロードすることで、劇場で誰でも聴くことができます。
- 原稿作成
ディスクライバー(※1)は、原稿を書く上でセリフや効果音、音楽では補えない映像から伝わる情報を、前後のつながりを理解したうえで、必要な情報は何かを考えます。そしてセリフや音の隙間にガイドを入れていきます。
(※1)音声ガイドの原稿を書く人 - 原稿チェック
別のディスクライバーが、表現が客観的になっているかどうかしっかりチェックします。固有名詞や情報の取り違いや不足している点などがないか、言葉の響きや使い方にも気を配りながら、丁寧に見直します。 - 音声ガイドモニター会
視覚に障がいのある方にご協力いただき、映画制作プロデューサー立ち合いのもと実施いたしました。ガイドが足りず内容が分かりにくいところや、聞き取りにくいところなど、耳で点検して修正をします。
目で見ていても気づきにくいポイントもあり、制作者の演出の意図も反映していきました。


- ナレーション収録
スタジオで音声ガイドナレーターやミキサーの方とのコミュニケーションを取りながら、ナレーションを収録します。固有名詞の読み方やアクセントに誤りがないかチェックしながら進めます。


「青春ゲシュタルト崩壊」の音声ガイドナレーターは、鳥海浩輔さんです。
作品に寄り添いながら、物語に引き込むような自然な語りで読んでくださいました。


映画の音声ガイドナレーション収録を終え、率直なお話をうかがいました。
- Q:映画の音声ガイドならではの難しさや発見はありましたか?
- A:「その作品の空気感・臨場感に沿って伝える、けど前に出過ぎず本編の邪魔をしない、 というところが難しいところなのかなと思います。」
- Q:バリアフリーの音声ガイドナレーションと、通常のナレーションとの違いは何ですか?
- A:「基本的には同じですが、"より分かりやすく丁寧に"というところは意識しています。」
今回の音声ガイド制作では、映画の魅力や情景が伝わるよう、多くの視点や意見を取り入れながら、ひとつひとつのシーンに丁寧に向き合って制作を進めました。
情報を正確に伝えるだけでなく、自然でわかりやすいナレーションとなるよう、言葉の選び方や表現にも工夫を重ねています。
これからも、作品にそっと寄り添うような音声ガイドを目指して取り組んでいきます。
ぜひ劇場で音声ガイドをきいていただけたら嬉しいです。
字幕・音声ガイドデータの納品後、劇場公開前のアプリ初号試写(映画字幕・音声ガイドが問題なく視聴できるか)を実施しました。
アプリの初号試写はマスコミ試写などに合わせて行うことが多いようなのですが、今回はスケジュールが合わず、配給会社ナカチカピクチャーズさまからお借りしたDCP(Digital Cinema Package)の再生ができる試写室を探して、アプリテストを行うことになりました。
当日は関係者14人が集まり、字幕・音声ガイドありで鑑賞しました。

- ―"字幕がズレることなく自然に読めたことに とても感動" ―
- ―"音声ガイドで言葉だけでも状況がしっかり伝わる" ―
- ― "音声ガイドが作品に合っていてよかった" ―
このような嬉しい感想を頂戴して、これまでチームで行ってきたことが ようやく実を結んだのだと実感しました。また それと同時に、これまで準備をしてきたものが終わってしまう... そんな寂しさもありました。
テレビ放送での作業と比較した時に、バリアフリー上映用の字幕・音声ガイドは制作に充てられる時間も長いのかなと思っていましたが、やるべきタスクが多く、思いのほか あっという間に時間が過ぎていった印象があります。
今後もバリアフリー上映の仕事に取り組んでいけるよう、精進していこうと思います。
映画のバリアフリー上映のご相談等ございましたら、以下までお気軽にご連絡ください。
UD事業戦略チーム:ud-support@ax-on.co.jp