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2019.07.19

NTV 体操界の世代交代&新たなスター誕生か?

安井英治

安井英治
スポーツセンタースポーツ2部

    • 4月から始まった体操の世界選手権代表の選考レースが先月で終わり、代表メンバーが決定した。今年の代表メンバーは恐らく誰も予想できなかったかと思う。これを読んでいる皆さんは体操選手と聞いて誰を思い浮かべるだろうか。 真っ先に浮かぶのは内村航平選手、白井健三選手かと思うが、残念ながら今年は二人とも代表入りならず。男子メンバー5選手のうち、リオ五輪メンバーが一人もいない、新生体操日本が誕生したのだ。 学生時代、体育会で体操競技に打ち込んできた自分が取材してきた激動の2ヶ月を振り返る。

    • 内村航平イメージ

      絶対王者・内村にまさかの事態?

      4月、全日本個人総合選手権。代表選考に関わる重要な大会。多くの人が内村選手の優勝を期待していただろう。しかし、この日の内村選手は序盤からいつもとは違った。1種目のゆか。連続技でラインオーバー。続くあん馬で落下、5種目の平行棒で左肩を負傷し、苦悶の表情で競技を中断。最後の鉄棒の着地では両手両膝をついてしまい、会場は溜め息に包まれた。 本人も予選落ちは想定外だったのだろう。 誰しもが驚く絶対王者のまさかの結果、この時点で内村選手の代表入りはなくなった。

      普段は強気な発言が多い内村選手が試合後のインタビューでは 「今のままじゃ(東京五輪は)夢物語」と、珍しく弱音を吐いた。これまで一切年齢を言い訳にしてこなかった内村選手。絶対王者も30歳という年齢には勝てなかったのか。 現場で取材していて、内村選手が平行棒で肩を痛めたとき、来年の東京五輪を考えて鉄棒は演技しないのではと思っていたが、痛めてもなお肩に負担がかかる鉄棒を実施したプロ意識の高さには驚いたし、感動した。

    • 萱和磨選手、谷川航選手、谷川翔選手、イメージ

      次世代エース白井 代表入りは?

      5月、NHK杯。4月の全日本との合計点で上位3選手が代表に内定する非常に重要な今大会。白井選手の表情は入場時から柔らかく、いい意味で肩の力が抜けていた。 しかし、あん馬でバランスを崩したり、得意のゆかでも着地を止めきれなかったりと、全体の完成度は高くなかった。 最終的に順位を7つ上げたが代表入りを決められなかった。

      一方、白井選手と同世代の萱和磨選手、谷川航選手、航選手の弟の谷川翔選手の3名が代表入りした。 試合後の会見では、いつもは冷静な白井選手が「まだ黙ってないぞというところを見せたい」と意欲を燃やしていた。 残されたチャンスを何が何でもものにしようとする次世代エースの意地を感じた。

    • 白井健三選手、橋本大揮選手、イメージ

      最後のチャンスを掴んだのは…

      6月、全日本種目別選手権。世界選手権代表メンバー残り2名を決める最終選考会。各種目のスペシャリストが出場する今大会で白井選手が代表入りするには、出場するゆか・跳馬・鉄棒の3種目を全て完璧にこなすことが最低条件となる。 この日も表情は常に明るく、得意のゆかでは以前の軽やかな動きが戻ってきて3位入賞、跳馬もミスなく演技し、最終種目の鉄棒を残すのみとなった。以前、白井選手は世間のイメージは白井=ゆか、跳馬かもしれないが、最近は鉄棒でも戦えるレベルまで成長してきている。イメージを変えていきたい。そう言っていた。だからこそ練習の成果を出しきってほしかった。 しかし、離れ技で2度の落下。この時点で既に代表入りの可能性は消滅した。白井選手にとっては2013年に代表入りして以来の落選となった。

      そんな中、白井選手以来となる高校生での代表入りを達成した選手が!それが市立船橋高校3年生の橋本大輝選手だ。得意種目はあん馬で、手足の長さと柔軟性を活かしたダイナミックな開脚旋回が武器だ。この日も代表入りがかかっていることを感じさせない堂々とした演技で観客を沸かせた。体操界に新たなスターが誕生した瞬間だった。 自分は選手席近くで取材していたが、緊張した様子は一切なく終始笑顔で、白井選手が高校生だったときのような次期エースのオーラを感じた。

    • 自分の考える展望

      代表メンバーは五輪経験者がいない、フレッシュな顔ぶれとなった。体操界はいま、世代交代を迎えているのかもしれない。しかし私は内村選手と白井選手の復活にかなり期待している。

      内村選手は4月の全日本後、約1週間何もやる気が起きなかったという。そんな内村選手に声をかけたのが佐藤コーチだった。佐藤コーチは内村選手の1個下で、高校時代には同じチームで共にインターハイに出場した。20年近くのつきあいで、内村選手が絶大な信頼を置いているコーチだ。 佐藤コーチは内村選手にオーストラリアでの合宿を提案した。環境を変えてみることが気分転換になりいいのではないかと考えたからだ。内村選手はそこで体操を楽しむという原点に返ることが出来たという。 今月取材に行った際には4月の大会後、夢物語と語っていた東京について、「五輪は4年に一度でも東京五輪は自分にとって一回しかない。そこに出場することは人生における「奇跡」であり、絶対に出場したい。」そうおっしゃっていた。話している時の表情は終始明るく、前に進もうとしているのがわかった。 レジェンドが本気になったとき、我々は本物の「奇跡」を目の当たりにするだろう。

      白井選手も内村選手と同様に、全日本後の1週間は体操を辞めたいと思ったそうだ。そんな時にある選手から声をかけられたという。 「健三さんは真面目すぎなんですよ。」 声をかけたのは日体大・体操競技部の後輩で、実力的に試合に出場できないレベルの選手だった。白井選手は常にトップにいて結果が求められていたため、純粋に体操を楽しむ気持ちを失っていた。白井選手はこの時初めて下の選手の気持ちがわかったという。 体操を心から楽しむことを思い出した白井選手の今後の活躍に注目だ!

      最後に

      いつまでも内村選手や白井選手に頼ってばかりでは日本の体操界に未来はない。それは今の代表選手が一番理解していて、彼らは二人の穴を埋めるべく着実に実力をつけてきている。 そんな新生日本の活躍も楽しみだが、自分は内村選手や白井選手が気になって仕方ない。今まで日本を救ってきた彼らがいい意味で何かやらかしてくれると期待してならないし、二人が引退するまで取材し続けるつもりだ。