国境を超えたチームプレー〜北極圏の入り口にて〜

2023.01.17
CREATOR REPORT
市川 佳子
制作センター制作4部

2022年12月、過去に海外紀行番組を一緒にやっていた仲間からの声かけで、フィンランドに飛びました。3カ国を繋いで放送する、生放送の中継番組。日本との時差、中継先同士の時差もあり、タイムコントロールがシビアな現場でした。

雪の中で何時間もカメラチェックや場当たり

現場は6カ国から集まった混成チーム。
メインディレクターはオランダから、カメラマン&制作進行はイギリスから、音声マンはドイツから、中継技術はフランスから、FD &アナウンサー&私は日本から、そしてフィンランドでは、現地レポーター1名とコーディネーターが4名。総勢14名が放送の1週間前に初めて集合しました。

もちろん事前の取材や仕込みはメインメンバーが進めているため、全員が初対面ではないものの、半分以上がその日から初めてプログラムに取り組むという状態。さらに、現場は最低気温マイナス21度という、まさに極寒の地です。
過酷な条件の中で、放送へ向けた一週間が始まりました。

フィンランドからの中継は、森の中をかけるトナカイのそりに乗ったり、家族で過ごすクリスマスを体験したり、サンタクロースに会うなど、アトラクション満載。

 

トナカイのそり トナカイは鼻先まで毛でふわふわ!日照時間は3時間ほど これは午前11時ごろの写真、朝焼けというのでしょうか?午後2時過ぎにははやくも日が暮れます

各所へ移動をしながらの生中継は、緊張感がありました。
そんな中継を円滑に進めるための必須アイテムが「Unity」という携帯アプリ。スタジオ収録で使うインカムのようなもので、全員が携帯電話にイヤホンをつなぎ、放送用のカウントや指示を聞きながら中継を進めます。

今回は、フランス・パリに東京とつなぐ拠点となるコントロールルームがあり、パリから各中継先へ指示が入るという流れ。Unityは中継を進めるための要です。携帯だけで全ての指示が入る時代になっていることに驚き、いまや電波さえあれば世界中どこからでも中継ができるのだなと実感しました。

しかしマイナス21度の中で、イヤホンジャックが凍ってしまい、聞こえなくなる症状が続出。
最初は原因が分からず現場は混乱。自然の前ではデジタルの進化も抗えないのだということも、同時に感じた出来事でした。

 

空気が乾燥し気温が低いため、雪が綿のようにふわふわ

気象
条件
もあり、確認できる時間が限られる中で精度を上げなければならず、技術チーム、演出チーム、コーディネーションチーム、それぞれの意見がぶつかることも。放送直前のチームにはピリピリした雰囲気が漂っていました。それでも、楽しい放送にする!というひとつの目的のために、それぞれが自分の役割に集中し本番ではチームプレーで放送を繋ぎ、最後は全員が笑顔で終えることができました。

今回の番組で実感したことは、国籍や制作期間は関係なく、私たち作り手は番組という一つの目的を共有することで、最高のチームプレーへと繋げることができるということ。
そして、普段と違う環境に触れることで、新しい感覚や考え、技術に出会い、視野を広げることができるということです。
コロナ禍を超えて新しい番組を生み出すためにも、チャンスがあれば、新しい世界に飛び出してみることは大切なんだなと思いました。

肉眼でもわかる綺麗な雪の結晶