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2021.09.28

東京オリンピック・パラリンピック
AX-ONリアルタイム字幕放送・最長時間への挑戦

小潟達也

小潟達也
メディアコンテンツセンター 字幕・解説放送制作部

    東京オリンピック・パラリンピック
    AX-ONリアルタイム字幕放送・最長時間への挑戦

    先日、無事幕を下ろした東京オリンピック・パラリンピック。
    1年の延期を経て57年ぶりの東京での開催、コロナ禍ではありましたがテレビを通じて大いに盛り上がり、感動的なプレーや新しい競技が見る人を夢中にさせた大会となりました。
    その大会の裏で業務にあたっていた字幕・解説放送制作部リアルタイム字幕チームの挑戦をお伝えします!

    リアルタイム字幕①
    リアルタイム字幕②
    リアルタイム字幕③
    そもそも「リアルタイム字幕放送とは?」

    耳の不自由な方にも番組を楽しんでいただけるよう、生放送の番組に字幕を付け放送するサービスです。

    主にスポーツ、情報、報道の生放送番組が対象で、放送で話される会話やナレーションを音声認識に通して変換し、誤字・脱字を修正してOAに送出するというものです。
    生放送のため、事前にその内容を理解し、人名や固有名詞などを音声認識パソコンと校正用パソコンに登録し、その場その場でどれだけ迅速に対応できるかがこの仕事のポイントになります。

    5万4306単語にも及んだ五輪関連用語登録

    前記でお伝えしたようにリアルタイム字幕は生放送で話される音声のほぼ全てを文字化しなければなりません。

    今回のオリンピック・パラリンピックで例をあげると、競技実況中の選手名が、音声認識で正しく認識し変換されるとOKなのですが、認識できなかった場合は校正者が入力し修正を行います。
    そのための準備として必要になるのが音声認識パソコンと校正用パソコンへの選手名や用語の登録になります。
    オリンピックは33競技、パラリンピックは22競技。
    これらに出場する全ての選手名、種目に関する用語、さらには家族、出身校や出身クラブ、恩師の名前まで、できる限り調べて登録する必要があります。
    どんな話になっても対応できるよう、念には念を入れてこの段階で調べ上げます。

    この作業がとにかく大変で、リアルタイム字幕チーム全員で手分けして単語登録を行い、音声認識は2万4330単語、校正PCは2万9976単語、合計5万4306単語という膨大な量の登録を行いました。
    また各スタッフが単語を調べる中でその種目を深く理解し、その他のスタッフにも同じように理解してもらうためにまとめた種目別のメモ、通称「カンペ」と呼んでいるのですが、それを作成しスタッフ間で情報を共有しました。
    これら事前準備を大会3か月前の5月から行いオリンピック・パラリンピックに臨みました。

    AX-ONリアルタイム字幕史上初!19時間30分の連続生対応

    我々リアルタイム字幕チームがこれまでに担当した1番組の連続時間は『箱根駅伝』の9時間が最長でした。
    それでも毎年ヘロヘロになるほど大変なのに、それを大幅に上回る19時間30分。
    正直、未知の領域過ぎて頭が考えることをやめてしまうほどの衝撃的な放送時間でした。
    しかし開幕まで時間もないので、すぐに運用体制の検討に入りました。

    『箱根駅伝』などの長時間番組の場合、通常よりスタッフ人数を増やし、時間ごとにスタッフがローテーションし対応します。
    このコロナ禍、2チーム体制で稼働し、その中のスタッフ1名が罹患した場合、そのチームのスタッフは濃厚接触者と認定され、チームは崩壊してしまいます。
    残る1チームだけでの長時生対応は現実的に不可能ということになるため、2チーム体制を見直し3チーム体制にすることに決定。
    しかし、その場合、現在のリアルタイム字幕スタッフの人数では足りないため、パッケージ制作チームから経験のあるスタッフにオリンピック期間中、協力をお願いしました。
    こうして何とか体制を固めることができました。

    リアルタイム字幕放送 制作風景リアルタイム字幕放送 制作風景

    開会式より1日早い7月22日、女子ソフトボールから我々の中でのオリンピックが開幕しました。
    連日、苦労しながらも何とか運用をこなし、大きな問題もなく大会が過ぎていきました。
    そして期間中最長の19時間30分生放送対応となる8月7日、各チーム6時間30分程度に担当時間を均等割りにして業務を遂行しました。

    チーム交代の際も狭い室内で15分以上の接触にならないよう1人ずつ交代するなど、コロナ対策にも気を使いながら運用を行いました。
    そして日付が変わり8月8日の深夜2時、無事19時間30分の生放送を事故なく終えることができました。

    その勢いのまま全ての運用を無事故で完遂し、無事パラリンピックの閉幕を迎えることができました。
    コロナ対策の面でも、1人の感染者も出すことなく終えることができました。

    オリンピック・パラリンピックならではの難しさを痛感
    • 筆者:小潟筆者:小潟

      今回の東京オリンピック・パラリンピックを通じて、改めてリアルタイム字幕放送の難しさを痛感させられました。

      57年ぶりの東京開催ということもあり、今までの大会とは比べものにならないほどの単語登録数となり、連続生対応時間も最長となり、コロナ禍も重なったことでスタッフの運用面もかなり厳しいものとなりました。

      1つは注目種目の選手が敗退したことによる放送予定競技の変更です。
      これはスポーツの世界なのでどうしようもないことなのですが、バドミントンを放送するはずが注目選手の敗退により他競技に変更され、事前の準備ができていないために海外選手名等に手間取ってしまうということがありました。
      選手名や用語は基本登録をしているのですが、日テレで放送予定のない種目を放送されると、さすがに厳しいと感じる場面がありました。

    もう1つは海外選手の名前に関することです。
    事前に頂いていた選手名リストでは「バ」と表記されていたのに、テロップでは「ヴァ」となっていたり、制作している者からすると、「音(発音)はこっちだけど画面ではこっち、一体どちらに合わせたらいいの?」となるようなことが何度かありました。
    このあたりは放送業界全体で統一できればいいのにと感じますが、そう簡単にはいかない事情があるのでしょうね。

    まだ東京大会が終わったばかりですが、来年には冬季・北京大会が控えておりますので、今大会の経験を生かしながら早め早めに準備を進めていきたいと思います。